2012年4月24日火曜日

釘は出ても打たれない


学生の基礎学力が高いわけでもなく、研究者も日本人と同程度のレベルでありながら、現状ではアメリカの科学・技術が世界のトップレベルである一つの理由は、「突出」を認める気風がアメリカにはあるからではないかと思う。「出る釘は打たれる」という言葉があるが、日本では他人より秀でた才能をさらに伸ばすのではなく、芽のうちに摘み取ろうとする社会的圧力が働く傾向が強い。しかしアメリカでは逆で、こうした芽が出たら、それを伸ばそうとする気風と社会のシステムが整っているように思う。私は今回アメリカに来て、改めてこちらの工業製品の質の悪さに辟易しているが、唯一アップルのiPadだけは素晴らしいと思う。文房具から自動車にいたるまで、日本の製品と比較すると、アメリカの製品の質は非常に低い。(ただしアメリカ人の多くは、アメリカの工業技術は、今でも世界一だと思っている。)iPadも、ほとんどの部品と組み立ては韓国や中国で行なわれていて、アメリカ製であるのはスティーブ・ジョブズという天才の「アイデア」だけだ。しかし、日本との違いは正にこの点にある。アメリカにはスティーブ・ジョブズのような傑出した人物を世に出す社会的な気風があるが、日本にはない。ソニーやトヨタの品質は素晴らしいが、個性やセンスは感じられない。開発「チーム」が皆で作った折衷的な匂いが漂っている。高度成長期の時代から、日本の品質管理の高さは世界に聞こえているが、「新しい」製品を生み出していく「傑出した個性」が今の日本にはない。突出や傑出を認める気風が日本にも醸成されるか分からないが、出来なければ日本は、これからもアメリカで開発されたアイデアの猿真似を繰り返し、品質だけは素晴らしいがセンスのない製品を造り続けて行くことになるだろう。(しかしそれでも実用面では、日本製品の方がずっと良い。iPadを除いては。)